戸田研究室|熊本大学 大学院先端科学研究部基礎科学部門 分析化学・大気化学・環境化学

熊本大学

For students

1,2年生のみなさんへ

化学は理学の他分野と密接に関連しています。また,他の学問分野との境界領域には興味ある対象や未知の領域,役に立つ事柄がたくさんあります。たとえば,地球環境を研究するには地学的な思考を取り入れながら環境で起こっている化学反応や化学形態の変化,物質移動を把握する必要があり,分析化学を究めなくてはなりません。生物活動もさまざまな化学反応のもとに成り立っており,生体内の化学物質を動的に調べていくことも望まれます。また,化学の中で分析化学は,新しいものを創り出す際の評価に必要な基幹となる学問であると同時に,分析化学を研究していくうえでも物理化学や無機化学,有機化学の知識や考え方が必要になります。実験系の学問分野を目指す理学部理学科のみなさん,まずは化学を学んでみましょう。そして分析化学は化学だけでなく他の領域と関連の深い学問です。
「分析化学」は大気・水・土壌などの環境試料や血液・唾液・尿・細胞などの生体試料に含まれる微量成分の量やその形態を探ったり,固体材料の物性を調べたり,と多岐にわたる学問です。また,最近は分析機器の発展が著しく,化学分析の仕組みはブラックボックスになりがちで,正しい分析を行うには原理や試料に精通していることが重要です。そこで,分析化学を正しく理解してさまざまな解析に臨む必要があり,化学コースでは,基礎分析化学にはじまり分析化学I~IIIを通じて多くのことを学んでいきます。ただし,分析化学全般をすべてカバーすることは難しく,2年生では溶液化学や平衡論を通じて化学や分析化学の基礎を学んでいきます。また,化学量論的な思考ができること,濃度や数値の正しい取り扱いができることも必要です。このような基本的なところをまずマスターしてみましょう。

研究室配属を検討している3年生や他大学の学生さんへ

研究室に配属すると,授業で学んだことに加え幅広い内容で研究を進めます。従って,物理や,地学,生物など少しでも化学以外を学んだことが生きてきます。研究テーマにもよりますが,当研究室では新しい分析法や分析デバイスを開発していく創造的な仕事が多くあります。新しいことを創りあげる喜びを分かち合いながら研究を進めて行けることを望んでいます。また,このように研究室独自のノウハウを活用し,環境化学に関する先進的な研究を遂行しています。私たちが開発した分析法やデバイスについては国内外から問い合わせや共同研究の依頼があり,テーマによっては他大学や国外の研究者と仕事をすることがあるかもしれません。
なお,研究室の英語化を進めています。留学生もいますので,グループ全員へのオフィシャルなメールは学生も英語で発信しています。また,大平先生,田中先生と協力し合いながら,研究室を運営していますので,幅広い指導が得られたり,設備を共有したり,教育や研究を行う上で恵まれた環境を提供するよう配慮しています。多くの学生が学生同士でわいわいがやがや言いながら研究しているのも特徴です。
研究室の特徴や雰囲気は「ぶんせき」の記事によく書かれていますのでぜひ開いてみてください。
「こんにちは 熊本大学自然科学研究科(理学系)戸田・大平研究室を訪ねて」

学部で学んだときとは大きく異なり,研究室では自ら学ぶことが要求されます。積極性があり,大学院へ進学を予定している学生さんを求めています。

研究室の設備

ひとつの研究室としては,充実した研究機器を配備しています。また,独自に開発している装置も多くあります。

ガスクロマトグラフ質量分析計群
ガスクロマトグラフ質量分析計群 TD-GC-QMS/FID, GC-ITMS

左は加熱脱着装置と組み合わせカラムに捕集した気体成分の測定向け,右は溶媒に抽出した成分の分析を行うGC-MSで,定量分析のほか,目的の物質を物理的に多段階に分解し構造決定の情報を得ることも可能です。

高速液体クロマトグラフ質量分析計 HPLC-MS
高速液体クロマトグラフ質量分析計 HPLC-MS

一般的なODSカラムのほか,HILICカラムによる親水性物質の分離検出や,イオンクロマトグラフィーとの接続によるイオン性物質の分析に用いています。目的に応じさまざまな装置と組み合わせながら用いているのも特徴です。

炎光光度検出器付ガスクロマトグラフ
炎光光度検出器付ガスクロマトグラフ
(gas chromatograph–flame photometric detector: GC-FPD)

硫黄を含む化合物をごく微量まで検出します。Globalな硫黄サイクルに関する研究や悪臭や火山ガスに関する調査・研究に重要です。

イオンクロマトグラフ群
イオンクロマトグラフ群(ion chromatographs for cations and anions)
イオン分子反応質量分析計
イオン分子反応質量分析計(ion molecule reaction–mass spectrometer)

ソフトイオン化により,大気や空気中の化学物質をそのままイオン化し,該当する質量数の信号を連続的にモニタリングします。フラグメントを形成しないので,特定の気体成分を連続的に追跡することができます。

原子蛍光分析装置
原子蛍光分析装置(atomic fluorescence spectrometer: AFS)

水素化や気化が可能な金属元素を高感度に分析します。ヒ素やセレン,水銀,鉛,カドミウムなどの微量分析に用いています。

吸光光度計,光ファイバ分光光度計,蛍光分析装置
吸光光度計,光ファイバ分光光度計,蛍光分析装置

各種の分光光度計です。光吸収や蛍光のスペクトルを測定します(写真は蛍光分析装置)。

各種ガス分析装置
各種ガス分析装置…SO2 紫外線蛍光; NOx 化学発光式; O3 紫外線吸収法 写真はat 森林総研環境計測室
ダブルカソードマグネトロン型RFスパッタリング装置
ダブルカソードマグネトロン型RFスパッタリング装置

金や白金などの金属薄膜やSiO2などの誘電体薄膜を製膜します。真空に保ったまま2種類の膜を重ねて製膜でき,質の高い薄膜の形成が可能です。
(コンセプト設計:戸田先生,設計製作:コスモシステム)

表面粗さ計
表面粗さ計

薄膜や厚膜の膜厚測定や固体表面の凹凸の観察を行います。

スピンコータ,マスクアライナ in yellow clean booth
スピンコータ,マスクアライナ in yellow clean booth

半導体や液晶を製作するのと同じような手法で微細加工を行うものです。シリコンやガラスの基板上にフォトレジストなどの有機薄膜を任意の膜厚で形成します。また,専用に設計したフォトマスクを用いて紫外線を露光し,微細なレジストパターンを基板上に形成します。電極薄膜のパターニングやマイクロチャネルの製作に用います。これらはクリーンブース内に設置され,清浄な雰囲気でオペレーションします。

電気化学分析装置
電気化学分析装置

サイクリックボルタンメトリCVやアノーディックストリッピングボルタンメトリASVにより金属イオンなどの分析や化学物質の電気化学的特性の評価を行います。

カスケードインパクター
カスケードインパクター

大気中の粒子を粒径毎に振り分けて捕集します。微小粒子PM2.5もこれを用いて粗大粒子と分けることができます。主に9階建て新棟の屋上で用いています。

レインゴーランド
レインゴーランド

雨水を降雨2mm毎に採取します。雨が降ると自動的に蓋が開き,溜まった雨水の重さで採取容器が動いていく絶妙な設計です。

標準ガス希釈調製装置(自作)
標準ガス希釈調製装置(自作)

ボンベガスを任意の割合で希釈し,ppbv~ppmvオーダーの試験ガスを調製します。各種分析計のキャリブレーションや開発したデバイスの評価に欠かせないシステムです。質量流量制御装置(mass flow controller: MFC)で成分ガスと希釈空気の混合比を決定します。

パーミエーター
パーミエーター

パーミエーションチューブや拡散チューブを利用し,各種ガスや蒸気の標準ガスを調製します。

研究室で開発した分析デバイス

micro Gas Analysis System (μGAS)

大気中の微量な成分を連続的に測定する独自のデバイスです。反応系や検出器を変えることで様々な成分の測定が可能です(H2S, SO2, CH3SH, COS, NO, NO2, HCHO)。

Parallel plate wet denuder (PPWD) and particle collector (PC)

拡散の大きさの違いを利用し,水溶性成分の粒子状物質と気体を分別して捕集するデバイスです。

大気試料採取用コレクションチェンジャー

一定時間ごとに大気を異なる捕集管やフィルターに導入します。大気成分の時間変化を追跡するための採取装置です。

Single column trapping/separation–chemiluminescence detection device (SCTS-CL)

シリカゲルなどの捕集カラムに目的成分を捕集し,段階的にカラム温度を上げることにより,ひとつのカラムで捕集と分離のふたつの作用を行います。脱着した成分を化学発光により高感度に検出します。

Vapor generation –chemiluminescence detector (VG-CL)

海水や湖水に溶存するnanomolarオーダーの微量のdimethyl sulfide (DMS)の検出をオンサイトで行うデバイスです。

Micro ion extractor (MIE)

血液1滴から目的のイオン性成分を抽出します。遠心分離や除タンパク質操作の代替えとなるため,わずか1滴の採血で分析や検査が可能になります。

PAGE TOP