教育プログラム



物理・化学プログラム




研究の紹介



高温物質科学
 イオン導電性ガラス、液体半導体、固体酸化物型燃料電池など高温状態にある物質中の原子のダイナミクスや電子状態を理論的手法および、計算機シミュレーションの手法を用いて調べています。 また、コンピュータ・グラフィックスによる可視化技術の開発に関する研究も行っています。

シミュレーションによる液体中の化学結合

レーザー分光学
 波長可変のレーザー光を固体あるいは気体の物質に照射することで、物質のエネルギー準位や励起、緩和過程などの,さまざまな重要な内部情報を得ることができます。 また、強いレーザー光を用いて、原子の運動を制御することも可能で、熱的に振舞う原子の速度をゼロに限りなく近づける、すなわち、「原子を冷却する」研究も行っています。 冷却された原子は、高分解分光等、さまざまな基礎研究に応用されます。

レーザー冷却された、ナトリウム原子群

薄膜物理学
 20世紀に発展した量子力学は原子や電子のミクロな世界を記述するのに不可欠なものとなっています。特に、磁性や超伝導は物質中の電子や格子の量子性の影響を強く受けた現象で、磁気テープ、MD、SQUID(超伝導量子干渉計)など様々なものへ応用されています。これらの物質の機能的な薄膜を作製し、その基礎特性を詳細に調べることにより、新しい現象の発見を目指しています。

超伝導現象におけるマイスナー効果
下に並んでいるものが強力な磁石。浮いている黒い物体が超伝導体

低温物理学・電波分光学(NMR)
 摂氏マイナス273.15度近傍の極低温の静寂な世界では、 物質を構成する粒子の基本的な運動を知ることができ、微弱な相互作用が観測されます。

シミュレーションによる液体中の化学結合

光応答分子、単分子磁石など21世紀を担う超分子をつくる
金属錯体は無機化合物と有機化合物の十字路に位置する物質です。 私どもは、優れた性質をもつ超分子の創生を目指して研究を進めています。
スピンクロスオーバー分子:
光により自由に性質を変える分子を創りだすことができれば、光応答分子デバイスとして利用できます。 光によりスピン状態が変化するスピンクロスオーバー分子を設計、合成し、光照射によりスピン状態が転移する様子をSQUID磁束計で調べます。 光の波長により正、逆両方向に変換させることもできます。
単分子磁石:
21世紀にぜひとも実用化にこぎつけたい物質の一つに単分子磁石があります。 ひとつの分子があたかも磁石のようにふるまう単分子磁石は、磁石の概念を変えるものです。希土類イオンを含む単分子磁石を世界ではじめてつくりました。
自然分掌機能や自己組織化能を内在する金属錯体:
これらは、ナノテクノロジーを支える機能分子や生体内金属酵素のモデル化合物となることができます。
 分子と対話しながら工夫を加えて新しい物質を合成することは化学者の大きな喜びです。 新化合物は、X線解析法、SQUID磁束計など最新機器で調べます。これらの研究では、仏、伊、ポーランド、他と国際共同研究しています。

単結晶自動X線解析装置

SQUID磁束計

層状の構造を持つ物質や
炭素からなる物質を基本とする物質に機能性を持たせる
 構造、結合および相互作用を設計した分子とその集合状態を制御することにより、新しい固体の性質(物性:電気、光、磁気など)や吸着・反応性(貯蔵材、触媒など)の創製の研究開発を行っています。 層状物質は中国武漢大学などと、炭素基盤物質については米国マサチュセッツ工科大学などとの国内国際共同研究を実施しています。

シミュレーションによる液体中の化学結合

薬理活性や機能性を持つ新規有機化合物の合成に関する研究
金属酸化剤を使って求電子的な炭素ラジカルを生成させ、 電子過剰な有機分子と分子内や分子間で反応させることで、様々な有機化合物の合成を行っています。 特に、抗マラリア活性を示す化合物には環状過酸化物構造を持つものがあり、一般的に不安定で収率良く合成することは極めて困難です。 当研究室では30年にわたる炭素ラジカル反応の研究過程で、マンガン(III)化合物を用いた触媒酸化反応による新規な有機環状過酸化物や有機過酸化物の高効率合成法を発見しました。

シミュレーションによる液体中の化学結合
    環状過酸化物の合成
現在、この合成法を用いて薬理活性を示す複雑な構造の二環性や三環性含窒素複素環状過酸化物の合成に取り組んでいます。  また、同様の反応を利用して新規な機能性を持つ大環状複素環化合物の合成も行っており、これまでに100員環大環状化合物の合成まで成功しました。 現在、さらに大きな環状化合物の合成を目指しています。 さらに、光化学反応を利用して簡単な有機分子から機能性を持つような複雑な有機化合物の合成にも取り組んでいます。

合成された17員環大環状化合物

固体光電子分光による電子状態研究
 アインシュタイン(A. Einstein)がノーベル物理学賞を受賞したときのテーマである「光電効果」によって物質外に飛び出してきた電子を解析することにより,その電子が元々の物質内でどのような状態にあったか知ることができます。 これを利用して特に物質内の価電子の状態を調べ,物質のもつ性質との関係を明らかにしようとしています。

高分子化合物の合成と物性に関する研究
 鎖状高分子は天然および合成高分子の基本構造であり、その物性は今後も重要なテーマです。 我々は、高分子鎖本来の性質を示す高分子希薄溶液から、集合体としての性質を示す高分子ゲルの領域までの幅広い視点で物性を検討し、存在する様々な相互作用と化合物の特徴との関係を明らかにしています。 例えば、高分子ゲルとその単一高分子鎖との溶媒間相互作用の比較や、キャプトデイティブモノマーから成る高分子を合成し、機械的に分解して鎖の強さの検討を行っています。