教育プログラム



数学コース




研究の紹介



整数論
整数の上であらゆる数学をする
 整数論は数学の中で最も長い歴史をもつ分野です。ガウスをして「数学の女王」と言わしめた整数論は整数そのものの研究のみならず、整数ないしは「それを含むより広い数の世界」であらゆる数学を試みる分野として発展し続けております。

リーマン予想

群論
対称性の美しさを感じとる
 数学的な対象を自分自身に重ねる動かし方全体を群と呼び、その性質を調べる分野を群論と云います。群の概念は方程式の解を求める試みから生じ、定義は19世紀にコーシーとクロネッカーにより与えられました。群の概念は幾何学など他の分野の発展にも重要な役割を演じています。

正多面体と準正多面体

力学系
動く点の軌道を追跡する
 高校の物理の授業で、物体は運動の法則に従って動くという(ニュートン)力学を学びます。このような一定の法則に従うものの動きを研究する分野のことを力学系といいます。例えば、漸化式で与えられる数列も、一定の規則によって作られる点列ですから、その振る舞いは力学系の研究対象になります。ここでは、具体的な漸化式xn+1=axn(1−xn)から作られる数列(点列){xn}を考えてみることにしましょう。2次関数で定義された比較的単純な漸化式であっても、数列{xn}の振舞いは大変複雑です。しかも定数a、初期値x0をほんの少しでも変えると全く異なる挙動を示すのも不思議で興味深い現象です。右図1は、a=4、x0=0.5のときにパソコンで数列を描かせた図です。折れ線と対角線y=xとの交点達が数列{xn}に対応しており、{xn}が区間[0,1]の中で「乱雑に」動き回るカオス状態であることがわかります。また右図2は、横軸にa、縦軸を{xn}の値が密集する場所(集積点)を描いたものです。aを0から4まで増加させたときに、集積点が複雑に変化していく様子が見て取れます。漸化式のように高校で扱う数学でも、振る舞いが分かっていないことも多く、最先端の研究につながっていくのです。
図1
図1
図2
図2

微分幾何学
空間の曲がり具合いを見る
 よく知られているユークリッド幾何は2000年以上前に形作られました。ごく当たり前と思われる5つの公準に基づいて、私たちが中学校の数学で出会っただろう図形に関する結果が体系的に解説されています。19世紀に入り、ユークリッド幾何の5つ目の公準である平行線の公準を否定することで、双曲幾何という別の世界が構築されることがわかりました。曲面論に基いて発生したリーマン幾何はユークリッド幾何、双曲幾何を含む多種多様な空間の幾何の構築を可能にし、その後の空間概念や幾何学思想に大きな影響を及ぼしました。微分幾何学はリーマン幾何をはじめとする様々な幾何を研究する分野です。

球面、平面および双曲平面(円板モデル)における直線(測地線)

微分方程式論
現象のダイナミックスをとらえる
 微分方程式は物理現象や生命現象など自然現象を記述する基本的な手段です。その解の性質を調べることで自然を解明していくとともに、 特別な微分方程式が見せる整数論・幾何学などとの深い関係を追求し,そこに見出される構造を解明する研究をしています。

太鼓の音をベッセル関数で聞く

代数幾何学
多項式で定まる高次元の図形
 2次多項式で定まる放物線、楕円、双曲線だけでなく,高次の多項式で表される曲線や高次元の図形を研究する分野です。フェルマの問題をはじめ、整数論、微分方程式、超弦理論、暗号理論などと関連しながら発展しています。

2次双曲面の変形

確率論
自然科学は不規則性の解明にあり
 時間に沿って発展、拡散する様子を探る確率過程論を中心に,ランダムネスの法則を探求しています。ブラウン運動の研究を中核に、確率積分、無限次元解析、マルコフ過程などの分野があります。これらは通信、確率制御、ファイナンス、量子統計、数理生物学等に応用されます。

格子上の電子の配置(+スピンの連結成分)
パーコレーションモデル

表現論
 群G の「表現」とは,G の元を行列として表すことです.G として有限群を考えましょう.このときにはGの構造を\表現を通して" 調べることに主眼がおかれ「代数学」の色彩が強いといえます.またG としてリー群(行列の群)を考える場合はV として函数のなすヒルベルト空間を取り上げます.よくわかっているリー群GをV に作用させて函数空間の構造を調べる,つまり「解析学」です.特にV として多様体上の函数全体などというモノを考えればV を調べることはその土台,つまり多様体の幾何学的な構造を見ていることになります.そうなるとこれは「幾何学」です.
数学はよく代数学,幾何学,解析学と分類されますが,これはあくまでも人為的なものであり,数学的自然とは相容れないこともあります.表現論は数学全体にまたがる一つの方法論であり,各研究者によって捉え方は異なります.また表現論自体に現れる組合せ論的な現象,構造は非常に面白いものであり,現代数学として活発に研究されています.