液体テルルの圧力誘起構造変化
Teの結晶相におけるTeの鎖は、融解しても部分的には保持され、
常圧下の液体Teは鎖状構造をしています。(液体中では、共有結合が切断されTe鎖の長さは短くなっています。
また、3配位を持つTe原子も存在します。)
液体Teの電子状態も基本的には結晶の電子状態と類似しています。
各Te原子の周りには、結合状態(σ軌道)と非結合状態(LP状態=Lone Pair State)が明確に存在します。
常圧下の液体Te内の電子状態
σ結合状態
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LP状態
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最近、国内の実験グループにより、高圧下の液体テルルに対してX線回折実験が行われ、
圧力増加に伴い、Te鎖主体の構造から高配位数の構造へと構造変化が誘起されることが報告されました。
この圧力誘起構造変化において、最も興味深いことは、最近接原子間距離の圧力依存性です。
体積が減少するにも拘らず、6GPaの圧力まで原子間距離が増加し、更なる加圧で減少に転ずるという極めて特異な振る舞いを示します。
このような液体Teの圧力誘起構造変化を調べるために、第一原理分子動力学シミュレーションを行いました。
その結果、原子間距離が伸びていく過程において、常圧下のLP状態に起因する弱い結合状態が新たに形成されることがわかりました。
これと同時にσ結合も伸び、最近接原子間距離も増加します。
高圧下の液体Te内の電子状態
LP状態に起因する弱い結合状態が新たに形成される(右図)