液体As2Se3中の半導体・金属転移(詳細)
液体As2Se3は、低温の半導体状態では、2配位をとるSeと3配位をとるAsからなる
三次元ネットワーク構造と呼ばれる構造を持ちます。
構造と電子状態の温度依存性をシミュレーションにより再現することで、以下のことが明らかになりました。
”三次元ネットワーク構造”(半導体状態(低温))
液体中で、砒素(赤い球)は3つのセレン(緑の球)と共有結合し、
セレンは2つの砒素と共有結合している。
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温度上昇と共に、液体内の共有結合が切断され、1配位をとるセレンと2配位をとる砒素が増加します。
このことは、この液体の構造が、三次元ネットワーク構造から一次元的鎖構造へ変化していることを意味します。
また、この構造変化と同時に、異種イオン(As-Se)間の結合が減り、同種イオン(As-As, Se-Se)間の結合が増加します。
温度上昇と共に増加した2配位をとる砒素の周りには、カルコゲン鎖と同様に、
共に2重に縮退した結合、非結合状態が(pバンドに)出現します。
しかし、砒素のp電子は3個しかないため、これらの状態を全て占有することができません。
このことが、As2Se3における金属化の主な機構と考えられます。
また、砒素の周りの空いた非結合状態を占有するために、セレンの周りから電荷移動が起こることもわかりました。
”鎖構造”(金属状態(高温))
温度の上昇と共に砒素と結合するセレンの数が
3個から2個へ減少する。
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金属状態では、ほぼ正三角形の形をしたクラスターが液体中に形成されます。
このような構造は、エネルギーが高いために低温相である半導体状態では存在しません。正三角形クラスターの寿命は0.1〜1psと非常に短く、鎖構造の組み換えの過程で一時的に(しかし恒常的に)生じる構造です。
”正三角形クラスターの形成 (金属状態)”
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