液体As2Se3中の半導体・金属転移
液体アルカリ金属や水銀などの液体金属は、温度上昇に伴い体積が膨張すると、電気伝導度の非常に小さい絶縁体になります。
これらの現象は、電子の局在化や電子相関に起因するものとして良く理解されています。
これに対し、液体カルコゲン(S、Se、Te)や液体砒素・カルコゲン混合系
(As2S3、As2Se3、As2Te3)は、
低温で半導体的性質を示し、温度を上昇させていくと、体積膨張に伴って電気を非常に良く通す金属状態へ変化(半導体・金属転移)します。
このような通常の液体金属とは全く正反対の電子的性質は、従来の常識に反する特異なものです。
体積膨張に伴う金属化の機構を解明することを目的として、これまで、液体Seや液体As2Se3に対して
第一原理分子動力学法による計算機シミュレーションを実行してきました。
構造と電子状態の圧力・温度依存性をシミュレーションにより再現することで、
液体内の共有結合の変化が半導体・金属転移と密接に関係していることがわかってきました。
半導体状態(低温)
”三次元ネットワーク構造”
液体中で、砒素(赤い球)は3つのセレン(緑の球)と共有結合し、
セレンは2つの砒素と共有結合している。
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金属状態(高温)
”鎖構造”
温度の上昇と共に砒素と結合するセレンの数が
3個から2個へ減少する。
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