熊本大学理学部数理・データサイエンス・AI教育プログラム

数理・データサイエンス・AI教育プログラムについて

近年、多種多様なビッグデータが学術分野・実社会を問わず生み出され、ビッグデータを扱うための素養が求められています。 熊本大学の教育プログラムには数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)があり、所定の科目を修得すると「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」修了の認定がなされています( 詳しくは こちら )。
本プログラムでは「リテラシーレベル」からさらに進んだ「応用基礎レベル」として、データサイエンス基礎、データエンジニアリング基礎、AI基礎について学びます。特に理学系の各分野での具体的な実用例を用いながら学びます。

・2023年8月に文部科学省 「数理・データサイエンス・ AI教育プログラム認定制度」に認定されました。 アドバンスドリテラシーロゴ
(申請書はこちら
(認定期限:令和10年3月31日まで)



身につけることのできる能力

データ解析に対する数理的理論の基礎を学び、理学系分野における具体的な事例を題材とした教育を行うことで、データから意味を抽出し、現場にフィードバックする能力、AIを活用し課題解決につなげる基礎能力を修得します。そして、理学系分野に数理・データサイエンス・AIを応用するための大局的な視点を獲得します。



科目構成

本プログラムには必修科目として「数理科学特別講義 A」「数理科学特別講義 B」の2科目があります。
・「数理科学特別講義A」では、物理学、化学、地球環境科学、生物学など理学系で用いられるデータサイエンス基礎、およびデータエンジニアリング基礎、AI基礎について学びます。
・「数理科学特別講義B」では、「数理科学特別講義A」で学修した具体的なデータ解析、AIに対する数理的理論の基礎について解説します。

また、必修科目を学ぶ上で基礎となる科目が選択科目として設定されています。

必修科目2科目を履修すると【理学部数理・データサイエンス・AIプログラム】を修了したと認定されます。



科目名 単位数
必修科目 数理科学特別講義 A 2
数理科学特別講義 B 2
選択科目 微分積分 I 2
微分積分 II 2
線形代数 I 2
線形代数 II 2
統計学 I 2
統計学 II 2

実施体制

委員会・組織等 役割
理学部長 プログラムの運営責任者
理学部数理・データサイエンス・AI教育プログラムWG プログラムの改善・進化
理学部アセスメント委員会 プログラムの自己点検・評価

モデルカリキュラムとの対応

授業に含まれている内容・要素 講義内容
(1)データサイエンスとして、統計学を始め様々なデータ処理 に関する知識である「数学基礎(統計数理、線形代数、微分積分)」に加え、 AIを実現するための手段として「アルゴリズム」、「データ表現」、 「プログラミング基礎」の概念や知識の習得を目指す。 1-6
  • 条件付き確率
    • 「数理科学特別講義B」(3回目)
    • 「統計学I」(7回目、8回目)
  • 代表値(平均値、中央値)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、2回目)
  • 分散、標準偏差
    • 「統計学I」(9回目、10回目)
    • 「統計学II」(1回目、2回目)
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
  • 相関係数
    • 「統計学I」(9回目、10回目)
    • 「統計学II」(1回目、2回目)
  • 確率分布、正規分布、独立同一分布
    • 「数理科学特別講義A」(7回目~10回目)
    • 「数理科学特別講義B」(3回目、7回目)
    • 「統計学I」(2回目~8回目)
  • ベイズの定理
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目、7回目)
    • 「統計学I」(7回目、8回目)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
  • 点推定と区間推定
    • 「統計学II」(5回目~7回目)
  • 帰無仮説と対立仮説、片側検定と両側検定、
    第1種の過誤、第2種の過誤、p値、有意水準
    • 「統計学II」(8回目~13回目)
  • ベクトルと行列
    • 「数理科学特別講義B」(3回目)
    • 「線形代数I」(1回目~3回目)
  • ベクトルの演算、ベクトルの和とスカラー倍、内積
    • 「数理科学特別講義B」(3回目)
    • 「線形代数I」(1回目~3回目)
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
  • 行列の演算、行列の和とスカラー倍、行列の積
    • 「数理科学特別講義B」(3回目)
    • 「線形代数I」(1回目~3回目)
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
  • 逆行列
    • 「数理科学特別講義B」(3回目)
    • 「線形代数I」(8回目)
  • 固有値と固有ベクトル
    • 「数理科学特別講義B」(3回目)
  • 多項式関数、指数関数、対数関数
    • 「微分積分I」(2回目)
  • 関数の傾きと微分の関係、積分と面積の関係
    • 「微分積分I」(3回目、8回目)
  • 1変数関数の微分法、積分法
    • 「微分積分I」(3回目~15回目)
  • 2変数関数の微分法、積分法
    • 「数理科学特別講義B」(3回目)
    • 「微分積分II」(1回目~15回目)
1-7
  • アルゴリズムの表現(フローチャート)
    • 「数理科学特別講義B](11回目)
  • 並び替え(ソート)、探索(サーチ)
    • 「数理科学特別講義B](11回目)
  • ソートアルゴリズム、バブルソート、
    選択ソート、挿⼊ソート
    • 「数理科学特別講義B](11回目)
  • 探索アルゴリズム、リスト探索、木探索
    • 「数理科学特別講義B](11回目)
2-2
  • コンピュータで扱うデータ
    (数値、文章、画像、音声、動画など)
    • 「数理科学特別講義A」(7回目~15回目)
  • 構造化データ、非構造化データ
    • 「数理科学特別講義A」(14回目~15回目)
  • 情報量の単位(ビット、バイト)
    二進数、文字コード
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
  • 配列
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
  • 木構造(ツリー)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、14回目~15回目)
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
2-7
  • 変数、代入、四則演算、論理演算
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
  • 関数、引数、戻り値
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
  • 順次、分岐、反復の構造を持つプログラムの作成
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
(2)AIの歴史から多岐に渡る技術種類や応用分野、更には研究や ビジネスの現場において実際にAIを活用する際の構築から運用までの 一連の流れを知識として習得するAI基礎的なものに加え、 「データサイエンス基礎」、「機械学習の基礎と展望」、及び 「深層学習の基礎と展望」から構成される。 1-1
  • データ駆動型社会、Society 5.0
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
  • データサイエンス活用事例
    (仮説検証、知識発見、原因究明、計画策定、
    判断支援、活動代替など)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
1-2
  • データ分析の進め方、仮説検証サイクル
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、14回目~15回目)
  • 様々なデータ分析手法(回帰、分類、クラスタリングなど)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、3回目~15回目)
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目、4回目~7回目)
  • 様々なデータ可視化手法(比較、構成、分布、変化など)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、7回目~15回目)
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
  • データの収集、加工、分割/統合
    • 「数理科学特別講義A」(7回目~10回目、14回目~15回目)
2-1
  • ICT(情報通信技術)の進展、ビッグデータ
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
  • ビッグデータ活用事例
    • 「数理科学特別講義A」
      (1回目、3回目~4回目、7回目~10回目)
  • ソーシャルメディアデータ
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
3-1
  • 人間の知的活動とAI技術
    (学習、認識、予測・判断、知識・言語、身体・運動)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、14回目~15回目)
    • 「数理科学特別講義B」(8回目)
  • AI技術の活用領域の広がり
    (流通、製造、金融、インフラ、公共、ヘルスケアなど)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、3回目~4回目)
  • 機械学習ライブラリ
    • 「数理科学特別講義A」(2回目)
3-2
  • AI倫理、AIの社会的受容性
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
  • プライバシー保護、個人情報の取り扱い
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
  • AIに関する原則/ガイドライン
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
  • AIの公平性、AIの信頼性、AIの説明可能性
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
3-3
  • 実世界で進む機械学習の応用と発展
    (需要予測、異常検知、商品推薦など)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
  • 機械学習、教師あり学習、教師なし学習、強化学習
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
    • 「数理科学特別講義B」
      (1回目、2回目、4回目~10回目、12回目、13回目)
  • 学習データと検証データ
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
  • ホールドアウト法、交差検証法
    • 「数理科学特別講義B」(8回目)
  • 過学習、バイアス
    • 「数理科学特別講義A」(5回目、6回目)
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目、8回目、14回目)
3-4
  • 実世界で進む深層学習の応用と革新
    (画像認識、自然言語処理、音声生成など)
    • 「数理科学特別講義A」
      (1回目、7回目~10回目、14回目~15回目)
  • ニューラルネットワークの原理
    • 「数理科学特別講義A」(1回目、5回目、6回目)
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目、12回目~15回目)
  • ディープニューラルネットワーク(DNN)
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
    • 「数理科学特別講義B」(1回目、2回目)
  • 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
    再帰型ニューラルネットワーク(RNN)
    • 「数理科学特別講義A」(5回目、6回目)
  • 深層学習と線形代数/微分積分との関係性
    • 「数理科学特別講義B」(3回目、12回目~15回目)
3-9
  • AIの開発環境と実行環境
    • 「数理科学特別講義A」(2回目、11回目~13回目)
  • AIの社会実装、ビジネス/業務への組み込み
    • 「数理科学特別講義A」(1回目)
(3)本認定制度が育成目標として掲げる「データを人や社会にかかわる 課題の解決に活用できる人材」に関する理解や認識の向上に資する実践の場 を通じた学習体験を行う学修項目群。応用基礎コアのなかでも特に重要な 学修項目群であり、「データエンジニアリング基礎」、及び「データ・AI活用 企画・実施・評価」から構成される。 I  該当なし
II
  • 「数理科学特別講義A」の講義において、物理学、化学、地球科学、 生物学など理学系で用いられるデータサイエンス基礎、およびデータ エンジニアリング基礎、AI基礎について学ぶ。
    【2-1】pythonコードを用意し、化合物ライブラリであるRDKitや Pubchemなどのデータベースから、線形表記法を用いて分子構造を 抽出したり、用意したデータセットを用いて分子構造と 物性相関について解析を行う。
    • 「数理科学特別講義A」(3回目~4回目)
    【3-4】事前に用意した熊本地方気象台の気象データ、他、 アメダスデータにPythonコードを適用し、人工ニューラルネットで どの程度の系列予測ができるのかを体験として知る。事前に用意した 画像データにPythonコードを適用し、人工ニューラルネットでどの 程度の精度の天気判定ができるかを体験として知る。
    • 「数理科学特別講義A」(5回目~6回目)
    【1-2】データに周期性があるかどうかを解析する基本的な 手法として、自己相関関数とフーリエ変換を学ぶ。そして実際の 観測データにこれらを適用することでパルサーを「発見」する。 解析ツールとしては自己相関関数やフーリエ変換の計算をする pythonコードをあらかじめ用意し、google colaboratory上 で動かしたりいじったりしてもらう。
    • 「数理科学特別講義A」(7回目~10回目)
    【3-9】インターネット公開データを利用して,データを収集し, 仮説検証を行い(例えば,地球温暖化は本当に起こっているのかを 公開されている実データから検証など),最後にその内容を 発表させる,といった実践的な演習講義にする. インターフェス:R (必要に応じてQGIS)
    • 「数理科学特別講義A」(11回目~13回目)

【問い合わせ先】
熊本大学理学部
〒 860-8555
熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1