理学部長 藤本 斉
「Pure Science」の第18号をお届けいたします。「Pure Science」は、熊本大学理学部で行われている研究の一端をご紹介し、基礎研究の奥深さ、面白さを高校生や若い世代の方々に知って頂くために、2007年から毎年発刊している広報誌です。今号も数学、物理科学、化学、地球環境科学、生物科学の各分野から1名ずつ計5名の先生に最近の研究成果や研究に関わる夢などについて執筆して頂きました。
コロナ禍という長いトンネルを抜けて、先生方の研究の最高の理解者であり、最も強力な共同研究者である大学院生や卒業研究生と伴に自由な発想の下、水を得た魚のごとく研究に打ち込んでいる様子が、「Pure Science」から窺えます。この数年間、制約の多い中で貯まりに貯まった鬱憤を晴らすべく、新たな真理に向かって邁進していることを実感できます
私は今年度末をもって大学人としての区切りである定年を迎えます。私が"なぜだろう"と思うことは、分子科学という狭い分野に限ってもまだまだ数多く残っています。これらの解明は、共同研究者を含め、後進の研究者に託します。
巻頭言の最後に、前号と同じになりますが、博士研究員のときに指導いただいた先生から熊本大学に赴任する際にお贈りいただいた言葉を載せさせていただきます。私のこれまでの研究姿勢に影響を与えた研究者のお一人です。
"天と地と人の和"
よい仕事をするための要件です。"天"は時のことで、何事も機が熟さないと良い仕事はできません。 "地"は場所です。そして何よりも"人の和"というネットワークが大切であることを伝えてくれた言葉です。研究を続けていけば、機はいずれ熟します。残るは、何処で誰と研究をするかです。
「Pure Science」を読まれている皆さん方の中から、熊本の地で稀有な研究を進め、人的ネットワークを広げ、次の世代を担う若き理学研究者が育っていくことを期待しています。