熊本大学 理学部

Pure Science

『ナノテク』分野のシート状材料

化学コース 助教 船津 麻美

 「ナノテク(ナノテクノロジーの略称)」という言葉をどこかで聞いたことがありませんか?「ナノ」とは、10-9m(10億分の1メートル)という大きさをあらわす言葉です。10億分の1のイメージは想像できますか?これは、地球の大きさを基準とすると、この地球の10億分の1は、ビー玉くらいのサイズになります。

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つまり「ナノ」という世界は地球の外側から地球の中にあるビー玉1つを見るような世界観となります。この「ナノ」の世界、なぜ重宝されているのかというと、物体を小さくしていくと大きな世界では見られなった性質が出てくるからです。私達の世界では、普通だとおとなしくて何もしないような物質がナノサイズになったとたん、活発になることがあります。例えば、「金」を例に取ります。金は、学校の教科書を見ると、一番安定で何もしない元素と書いてありませんでしたか?そのため、金は貴金属として古代から重宝されてきました。そのいつも安定してる金がナノの世界では活発になるのです!つまり、粒子が小さくなると表面や過度等に出てくる元素の割合が多くなって、それが活発に働きはじめます!このようにして、「ナノ」の世界とは、通常の私達の世界では思ってもみないことが起こる世界なのです。

 この面白さに魅了され私達のグループも、「ナノテク」の分野に含まれる研究をしています。私達が扱う材料は、シート状のナノ材料です。私達はこれを「ナノシート」と呼んでいます。ナノシートとは厚み方向が数nmに対して、横サイズがその数百倍以上の構造を持つ材料です。つまり厚み方向には、これ以上薄くすることができないため世の中で最も薄いシートであり、厚みがほぼ無いことより、物の表面のみからなる材料とも言うこともできます。

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ナノ材料の活性化を進める特徴の1つは「表面」と話しましたが、このナノシートは「表面」のみからなる材料であるため、ナノ材料の中でも、特に活発な特性を秘めているとも言われております。加えて、ナノシートはナノテク材料の中では比較的新顔であり、多くの蓄積があるナノチューブ、ナノ粒子などと比較して、新規の材料探索に研究の重点が置かれています。私達も、新しい価値をもった新しいナノシートを開発すべく、日々、周期表と睨めっこし、ナノシートの合成メカニズムを追及することを主軸に研究を進めております。