三沢 正史

熊本大学理学部理学科
相関数理科学講座
教授
教育研究分野:解析学

専門分野:偏微分方程式論
研究テーマ:変分問題における正則性, 特異性の解析

閉じた針金を石鹸水につけて引き上げると 針金を張る石鹸膜ができます. 経験的には, どんな形の針金に対しても 針金を張る石鹸膜はいつでもできるように思われます. この素朴な現象は, どのように理解することができるでしょうか. この石鹸膜の存在問題は, あるエネルギー(面積)を最小化する 変分問題として定式化されます. 要するに, エネルギー(面積)に対する極大極小問題です. このような変分問題は, 物理, 化学, 生物などにおいて 自然に現れる数学的問題であり, 極小曲面の存在問題はその中でも 古くて新しい数理解析の問題となっています. 極小曲面は, 偏微分方程式の解としてあたえられますが, この解は調和関数と密接に関連があります (あるいはそのものと思ってよい). 現在では, 調和関数の一般化である調和写像と関連して 幾何学, 解析学さらには代数学に跨る内容を有する問題となっています. 当研究室の研究テーマは以下です.

1. 調和写像の存在とその時間発展の正則性, 特異性の解析.

2. 高次元空間内の極小曲面および定平均曲率曲面の存在と その時間発展の正則性, 特異性の解析.

3. ミンコフスキー空間(宇宙のモデルである時空間)上の 調和写像の存在と正則性の解析.


研究成果

1. 調和写像の一般化であるp調和写像とよばれるあるエネルギー最小化問題 に対する時間発展方程式の弱い意味の解(数学的な抽象解)が, 実際に連続微分可能な関数となるための条件を証明した. これにより, 初期値境界値に対するある条件のもとでは, p調和写像の時間発展方程式の解が時間大域的に存在すること, およびその解が, 時間無限大では 定常解であるp調和写像に収束することがわかる.

2. 高次元空間における極小曲面の時間発展問題の弱解が 時間大域的に存在すること, およびその解は有限個の点を除いて 連続微分可能であることを証明した. また, 各特異点での解の挙動は, 定常解である極小曲面によって 特徴つけられることもわかる. この極小曲面は, エネルギーレベルの高いものであることが 予想される.

論文リスト