「理想境界と立体射影の方法」古島幹雄
針金を好きな形にして枠を作り石けん水に浸して持ち上げると,枠の中に石けん膜ができます.膜の張り方は枠の形によってきまってしまうので,枠=境界が内部の状態をきめることになっています.このように境界が内部の状態を決定する,というのは自然界によく見られる現象で,数学においても重要な考え方です.ではたとえばxy-平面の境界はどのように考えたらよいのでしょうか.無限に広がる平面にはどこにも境界がないように思えますが,「立体射影」という方法を用いると,見えなかった境界が現れてきます.それが「理想境界」です.平面に理想境界を付け加えると球面ができますが,このものの見方を解説し,そこに現れる数学的世界を通して,哲学の世界までお話ししたいと思います.
「コンピュータにできること,できないこと」山ノ井克俊
高速に,大量の情報を処理してくれるコンピュータ.現代のスーパーコンピュータが1秒間におこなう計算を人間が一人でおこなうと100万年以上かかるといわれています.しかし,どんなに高性能のコンピュータを使っても決してできない「計算」があるのです.コンピュータにできること,できないこと,そのさかいめにとても面白い数学があります.この講座では,コンピュータと数学の関わりを通して,数学の広がりと感じ取っていただくことを目標にします.