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炭化珪素(SiC)の圧力誘起構造相転移

炭化珪素(SiC)は、軽量高強度で腐食しにくく、化学的、機械的性質に優れ、光学デバイスや工学材料として重要な物質です。 常圧下の結晶構造は、閃亜鉛鉱型(zinc-blende)構造ですが、100GPa以上の高圧化において圧力誘起構造相転移を起こし、 岩塩型(rock-salt)構造になることが実験的に知られています。

従来、この構造相転移は、珪素と炭素の副格子が、zinc-blende構造の[111]方向に 互いに逆向きにシフトすることにより起こると考えられていました。 しかし、第一原理電子状態計算を用いてエネルギー障壁を計算してみると、とても現実には起こり得ないほど高いものになることがわかり、 この相転移パスに対して疑問が抱かれました。

そこで、分子動力学シミュレーションを用いて、高圧下における炭化珪素の構造相転移の機構を探りました。 シミュレーションの結果、珪素と炭素の副格子は、[111]方向ではなく、[100]方向に互いに逆向きにシフトすることがわかりました。 この新しい相転移機構の重要な点は、共有結合を切断することなく岩塩型構造への転移が起こることです。 第一原理電子状態計算により求められたこの相転移のエネルギー障壁は、従来のものに比べずっと小さなものになります。

 

閃亜鉛鉱型構造(常圧相)

”4配位構造”
炭素(赤い球)は4つの珪素(青い球)と共有結合し、珪素は4つの炭素と共有結合している。

 

岩塩型構造(高圧相)

”6配位構造”

>> 4配位構造から6配位構造への変化(動画)