purescience
第11号 2016年12月
噴火を観る
2014年11月に阿蘇中岳が噴火した時に噴火を間近で見る得難い経験をしました。阿蘇中岳第一火口からもくもくと灰白色の煙が出続けているのを眺めていると、シャーッという音とともに暗灰色の煙が、同じ火口からジェットのように勢い良く立ち上がってきました。「もくもく」の丸い雲とは異なり、先が尖っていて、一気に灰白色の「もくもく」を追い越していきます(下左図参照)。その雲の中から雨のように火山礫が降っているのがわかります。ジェットはやがておさまり「もくもく」になりますが、しばらくするとまたシャーッという音のジェットが立ち上がります。「もくもく」と「シャーッ」のサイクルに目を奪われていました。ジェットを注意深く見ると、先端部分がはじけて、噴石を四方に飛び散らしているのがわかります(下右図参照)。火山弾やスコリア(=黒い軽石)形成の瞬間です。噴煙の高さは100mを超える程度、いわばストロンボリ式噴火のミニ噴煙を近くで観察できた貴重な時間でした。
噴火目撃の体験談で衝撃的なのは1943年2月20日、トウモロコシ畑に誕生したメキシコのパリクティン火山の記録だと思います。ゴミや瓦礫を放り込んでも埋まらない深さ1.5 mの穴があったと言います。地震や地鳴りが始まり、半月後、農作業中の4人の前で、突然その穴から裂け目が延びて、火山灰が吹き上がりました。やや離れた場所にいた人はその瞬間、幅2 m、長さ10 mの地面が1m浮き上がったのを目撃しています。また火口から30 mの所にあった松の木が発火し、硫化水素の臭いがしたそうです。目撃者の1人が「驚いたけれど美しいものを観た喜びを感じた」と語ったことが印象的です。火山灰やスコリアが降り積もって、あっという間に山になり、翌日には10 m、1週間後には140 mの高さになりました。ストロンボリ式噴火の典型,阿蘇米塚のようなスコリア丘の誕生です。(阿蘇中岳の今回の噴火でも一時、第一火口内にミニスコリア丘ができました。)
火山噴火を比較的安全に見学するとしたら、ハワイを勧めます。1983年以来噴火が続いているマウナケアでは、今でも灼熱の溶岩を間近で見て、その熱さを感じることができます。生きている地球の息吹を感じる瞬間です。ハワイに行く機会があれば,ぜひ訪れられたらいかがでしょうか?