purescience

第11号 2016年12月

コンピュータで見るミクロな世界

物理学コース 教授 下條 冬樹

下の図を見て下さい。何を表していると思いますか?

テルミット反応コンピュータシミュレーション

これは、酸化鉄Fe2O3がアルミニウムAlと反応して純鉄Feと酸化アルミニウムAl2O3(アルミナといいます)ができる「テルミット反応」の様子をコンピュータシミュレーションで再現しアニメーションにしたものです。図の中の球は原子の位置を表しています。緑球、赤球、白球は、それぞれ、鉄原子、酸素原子、アルミニウム原子の位置を表します。勿論、実際の原子は、球形をしているわけでも、そのような色に見えるわけでもありません。分かり易いように便宜上色のついた球で表現しています。①の図は、鉄(緑球)と酸素(赤球)の化合物である酸化鉄の上下にアルミニウム(白球)がある様子を示します。その状態から、②図から⑤図に示されているように、酸素(赤球)がどんどんとアルミニウム側へ移動し、最後には、中央に鉄(緑球)だけが残されている様子が分かります(⑥の図)。つまり、酸化鉄が還元されたのですね。その上下のアルミニウムは酸化されてアルミナができています。

このように、コンピュータシミュレーションを用いると実際には目で見ることができない物質の中の原子や電子の動きを観察することができます。では、こうした原子や電子の動きを決めているのは何でしょう?それは、自然をつかさどる「物理法則」です。言い換えると、ミクロな世界で起きていることを本質的に理解する上では物理的な知識が必要不可欠なのだと言えるでしょう。

私たちの研究室では他にも様々なコンピュータシミュレーションを行っています(下図参照)。一緒にミクロな世界をのぞいてみませんか?

水中のアルミニウム微粒子
水中のアルミニウム微粒子
デンドリマー高分子内の電子の波動関数の分布
デンドリマー高分子内の
電子の波動関数の分布
水中のAlLi 微粒子による水素分子生成の様子
水中のAlLi 微粒子による
水素分子生成の様子