purescience
第11号 2016年12月
巻頭言
理学部長 市川 聡夫
この「Pure Science」は、第11号である今回からWeb版のみの刊行となります。しかしながら、熊本大学理学部の教員がそれぞれの分野の研究について、高校生や大学初年次の理系学生向けに分かり易く解説するという目的は変わりません。皆さんが「Pure Science」を通して、理学研究に興味や関心を持って頂ければ幸いです。
私が研究している超伝導(superconductivity)は、1911年にオランダ・ライデン大学のカメルリング・オネスのグループによって発見されました。100年以上前の出来事です。極低温の温度領域における水銀の電気抵抗を測定していた彼らは、ある温度(超伝導転移温度)以下になると急に電気抵抗がゼロになる現象を観測しました。それ以降、超伝導発現のメカニズムを解明しようと、多くの科学者がその謎に挑戦しました。「なぜ?」という疑問が多くの科学者をつき動かしたのだと思います。その成果は、1957年に発表されたジョン・バーディーンらによるBCS理論に結実しました。しかし、現在でも全ての超伝導体に当てはまる理論が構築されているわけではなく、超伝導に対する研究は継続して行われています。同様のことが、現在も多くの理学研究者によって、それぞれの研究対象に対して、挑戦が繰り返されているのです。
「Pure Science」第11号では5つの研究分野について、先生方の「なぜ?」という疑問から始まった研究の一端を紹介しています。少し難しいところがあるかもしれませんが、先生方の研究に対する情熱と喜びを感じとって頂ければ幸いです。皆さんの中から理学研究に担う次世代の研究者が誕生することを期待します。