アガロースゲル電気泳動でDNA断片を大きさに従って分離し、DNAをゲルからニトロセルロース膜へ移行させてハイブリッド形成を行い、特定のDNA断片を検出する。E..M..Southernによって開発されたブロッティング方法である。ゲル中のDNA断片をアルカリ塩溶液に浸して変性させ、そのゲルごとニトロセルロースシート上に置く。そしてゲル上におもしをして置いて液を染み出させる。変性した一本鎖DNA断片をニトロセルロースシートに結合させ、次にこれを放射性標識したDNAあるいはRNAプローブとハイブリッド形成させて位置を決定する。最近は多数のサザンブロットのキットが市販されているので容易に行うことができる。今回はTOYOBO社製のサザンブロットキットのプロトコルを参考にして紹介をする。
1)プローブの作成
- PCR反応組成
・DIGとは標識のことで、DIGラベルされたdNTP(ここではウラシル)をPCR増幅によりDNAに取りこませる。
2)サザンハイブリダイゼーション
- 染色体DNAの前処理
37℃で適当な時間制限酵素処理
- 0.8パーセントアガロースゲル電気泳動(TBE buffer)
マーカーと各種制限酵素処理したDNAをそれぞれのレーンで電気泳動する。電気泳動が終了し、エチジウムブロミドによる染色が確認できたら、脱イオン水に10分くらい浸ける。
(アルカリ塩溶液の調整)
- ゲルをアルカリ塩溶液に浸し、30min(10min後、液を交換して20min)緩やかに振とうする。
・アルカリ処理をしてDNAを1本鎖にすることにより、DIGラベルされたプローブとDNAが結合(ハイブリダイゼーション)しやすくなる。
(脱イオン水で洗浄後、ゲルを中和溶液で共洗いする) - ゲルを中和溶液(0.5M Tris-HCl pH7.5、1.5M NaCl)に浸し、30min(10min後、液を交換して20min)緩やかに振とうする。上部のキシレンシアノールが緑から青に戻る。
(脱イオン水で洗浄後、1×TBEで共洗いする) - 1×TBEに30min浸す。また、ナイロンメンブレンHybond‐N_(Amersham社製)を同様に1×TBEに浸す。
- .ゲル上のDNAをメンブレンに転写する。
1×TBE溶液が上部に移動すると共に、ゲル中のDNAがニトロセルロール膜に転写される。
- メンブレン上のDNAをこていするために、メンブレンをキムタオルで包んでガラス容器にのせて80℃で1時間放置する。その後、UVを5minあてる。
(80℃で1時間放置中にハイブリダイゼーション溶液の調整)
- 厚めのポリ袋にメンブランとハイブリダイゼーション溶液5mlを入れて62℃で2時間浸す。
・メンブレンが乾燥している状態なので、後に行うハイブリダイゼーションのためにメンブレンをハイブリダイゼーション溶液になじませる。
- 2時間の10分前にプローブの熱変性を行う。(95℃で3分)
プローブは10ng/ml(20μl)あれば十分である。
・熱変性させてDNAを1本鎖にすることにより、DNAとDIGラベルされたプローブが結合(ハイブリダイゼーション)しやすくなる。 - 2時間後、ハイブリダイゼーション溶液を捨て、新しいハイブリダイゼーション溶液5mlと先程のプローブをいれて再びシールし、62℃で一晩ハイブリダイゼーションさせる。
- メンブランを取り出し、脱イオン水で洗った後、1×SSC,0.1%SDS溶液に浸し、室温で5分軽く振とうする。(2回)
(脱イオン水で洗浄後、buffer1で共洗いをする) - buffer1溶液に浸し、室温で5min軽く振とうする。
・メンブレンを洗浄する。
(buffer2溶液の調整)
buffer2溶液50ml分
buffer1溶液にブロッキング試薬を1%(w/v)になるように加える。
- buffer2溶液に浸し、室温で30min軽く振とうする。
・メンブレンを洗浄する。また、ブロッキング試薬によりメンブレンを保護する。 - buffer2溶液でフラッシュ遠心した抗体の上清を適当な濃度に希釈し、室温で30分激しく振とうする。抗体の上清0.5μlにbuffer2溶液1mlを加え、buffer2溶液4mlをシールしたゲルに加え、抗体入りbuffer2溶液1mlを加える。
・DIGラベルされたプローブとハイブリッド形成したDNAを、抗DIG抗体と結合させる。
(洗浄buffer溶液の調整)
洗浄buffer溶液100ml
buffer1溶液にTween20を0.3%(w/v)になるように加える。
Tween20(0.3%) 0.3g
- bufferを捨て、洗浄bufferに浸し、室温で15分緩やかに振とうする。(2回)
- 脱イオン水で洗浄し、buffer3溶液に2分浸す。
- buffer3溶液500μlとルミホス10μl(直前に混ぜる)をメンブランと一緒にポリ袋に入れてシールする。暗所に1時間置き(30℃の恒温室)発光させる。
・発光の原理
- X線フィルムを暗所で一晩感光し、現像する。
3)試薬の調整