Yeast two-hybrid法

 レポーター遺伝子(栄養性機能遺伝子やlacZ遺伝子)の転写活性を指標に2つの蛋白質間の相互作用を、酵母内で検出するシステムです。その他にも、既知の遺伝子産物と相互作用する相手側の遺伝子の領域決定や、発現ライブラリーより相互作用を示す、新規の遺伝子のスクリーニングにも用いられます。酵母生体内(in vivo)で行えるため、弱い一時的な相互作用も検出できます。また、面倒な蛋白質の精製や抗体を必要としないという利点もあります。
 操作手順としては、ある遺伝子(bait)をDNA 結合蛋白(DNA-BD)と融合したものと、その遺伝子と相互作用すると考えられる遺伝子(prey)を転写活性化遺伝子(DNA-AD)と融合させたものの双方を酵母内で発現させます(このとき作られる双方の遺伝子産物には、核内局在シグナルを持たせてあるため、各融合蛋白は核内に移行します)。レポーター遺伝子は酵母の染色体中に組み込んであり、酵母細胞内でbaitとprey が相互作用をした場合、レポーター遺伝子上流の転写が活性化されます。実際には、培地プレート上での栄養要求性の回復や、βガラクトシダーゼ活性の測定により、相互作用を検出します。相互作用が確認された遺伝子は酵母より単離し回収後、その他の機能の解析に用いることができます。
 しかし、相互作用が陽性と観察された蛋白質間で、必ずしも相互作用があるとは結論できません。なぜならば、DNA-BD に融合させた遺伝子が、それ自身単独でレポーター遺伝子の転写を活性化してしまうというような偽陽性の問題があるからです。偽陽性を低減するためは、3種類のレポーター遺伝子を持つ酵母株を用いることで解決することができます。(bait 蛋白とprey 蛋白の複合体が、一酵母内で3種類のプロモーター配列に結合し転写を活性化するようにする)。

<試薬>
・ 2×SDS gel-loading buffer(100mm Tris-Cl、200mM dithiothreitol、4%SDS、0.2% bromophenol blue、20% glycerol)
・ TE(pH7.5)
・ TE(pH7.5)/0.1M LiAc
・ TE(pH7.5)/40%PEG4000/0.1M LiAc
・ Dimethylsulfoxide(DMSO)

<方法>

baitとlacZの導入

(baitは相互作用するタンパク質の1つとして、lacZはレポーター遺伝子として用いる。)
1) 目的のタンパク質(bait)をコードするDNAを導入用ベクタ-pGildaのMCSに注入したものを用いる。
2) 酵母のEGY48に融合プラスミド(bait注入)とlacZリポータープラスミドをトランスフォームさせる。
3) CM 、X-gal選択培地で30℃で2‾3日間インキュベートし、形質転換したコロニーを分離する。
4) リポータ遺伝子(lacZ、LEU2)が活性化しない事を確認したら、30℃で4日間インキュベート。

baitタンパクの発現を確認

(baitの存在を確認し単独ではレポータ活性が起らない事を見る)
1) CM液体培地に食菌し30℃で1晩、培養する。
2) 培養液1.5mlをマイクロチュウブに移し、最大速で3‾5分間遠心する。
3) デカンテーションにより上清を注意深く捨てる。
4) 50μl の2×SDS gel-loading bufferを加え、vortex後、氷に静置。
5) 5分間boil。
6) 氷中に戻した後、最大速で5‾30秒間遠心する。
7) 上清のうち20‾50μlをSDS-PAGE用のポリアクリルドゲルにアプライする。
8) 目的サイズのbaitタンパクが発現している事を確認する。

ライブラリーのトランスフォーム

(baitと相互作用するタンパク質をライブラリー内からスクリーニング。)
1) baitが発現しているコロニーを選び、20mlのCM液体培地に植菌し30℃で1晩インキュベートする。
2) 培養液を300mlのCM液体培地に加え、OD600>0.5になるまで培養する。
3) 250mlの遠心管に移し2500‾3000rpm、室温で5分間遠心する。上清を捨て30mlのSDWをペレットに加える。50mlのファルコンチュウブに移す。
4) 2500‾3000rpmで5分間遠心し、ペレットに1.5mlのTE(ph7.5)、0.1M酢酸リチウム液を加える。
5) ライブラリーDNA1μgと変性させた担体DNA50μgを1.5mlチュウブで混合し、16)の培養液50μlを加える。
6) 300μlのTE(pH7.5)、40%PEG4000、0.1M酢酸リチウムを加える。数回ひっくり返し混合した後、30℃で30‾60分間インキュベート。
7) 40μlのDMSOを加え混合し、42℃で10分間ヒートショックを加える。
8) CMプレートにまきコロニーが現れるまで30℃でインキュベートする。
9) 個々のコロニーを4種類のCM選択培地(Glu/X-gal、Gal/Raf/X-gal、Glu、Gal/Raf)に植え、ポジティブクローンを選抜する。

ポジティブクローンからプラスミドDNA(prey)の回収
大腸菌にトランスフォーメーション
プラスミドDNAを調整後、prey cDNAを解析