RNAを鋳型としてたPCR法。逆転写酵素を用いてRNAを鋳型としたDNA合成反応(逆転写反応)を始めに行ない、そのDNAを鋳型としてPCRを行なう方法。ポイントや注意する点に以下のことがあげられる。
- ゲノムのコンタミを考慮し、ネガコンとしてRNA抽出液を鋳型にしたPCR反応を行う。ただし、 イントロンを挟むようにプライマーを設計した場合はネガコンをとらなくともよい。(RNA の調製の際は、必ずRNase free下で、DNaseIを用いてゲノムを除去する。)
- 逆転写反応液によって通常のPCR反応が阻害されることがあるため、逆転写反応液は20倍以上に希釈して 使用する。PCR反応の鋳型には、それを1μl 使えば十分である。
- DNAとRNAの2本鎖は強固なので、PCR反応の初めの変性は反応時間を長めに設定すること。また、RNaseHを用いてRNAを分解する反応をcDNA 合成後に付け加えるのもよい。しかし、その反応を省略してもほとんど問題ない。
- RNase H でRNAを消化した場合、cDNA は1本鎖になっており、通常のPCRでは非特異的なバンド が多くなる。それを回避するため、ホットスタート法を行うのがよい。簡便法としては、サーマルサイクラーが核酸の変性温度に達してからサンプルを乗せるようにする。もちろんサンプルは それまでon ice しておく。
- 操作に用いる試薬はRNase free の調製が必要であるが、RNase free であることと同様に重要なのが、DEPC を完全に除去することである。DEPC によってはPCR反応が阻害されてしまうからである。そのため、試薬は使用する前に臭いを嗅ぎ、DEPC 臭がしないことを必ず確認することが肝要である。
<試薬>
・ 0.2%DEPC-DW
・ 10x PCR buffer (50mM KCl、10mM Tris-HCl、7.5mM MgCl2、0.01%ゼラチン、10mM DDT)
・ 25mM MgCl2
・ 10mM dNTP
・ 0.1M DTT
<方法>
Super ScriptTM Preamplification System(GIBCO BRL 社)を用いた。
一般的にcDNA鎖は、polyAの付け根から約3kb しか伸長しないと言われている。しかし、Super Script II RT は、RNase H 活性が除去されているので、完全長のcDNA を得ることが可能である。

上記の液を混合させ70℃、10min、インキュベート - on ice 1min (RNAを完全に1本鎖にする。)
- 以下の試薬を混合させる
- 42℃、5min、プレインキュベート(非特異的な伸長反応を防ぐ。)
- Super Script II RT 1μlを加える。
- (42℃、50min)→(72℃ 15min)→(on ice 3min)のプログラムで逆転写反応を行う。(mRNAに相補的な配列をもつ1本鎖cDNAを合成する。)
- RNase Hを1μl加え、37℃、20min、インキュベート(RNAを分解し、次のステップであるPCR反応がスムーズに行なうようにする。)
- 以下の試薬を混合させる
- 下記のプログラムでPCR反応を行なう。