自然科学に実験は欠かせない。特に化学の研究はほとんどが実験から成り立つ。 人にもよるが概ね実験をすることは楽しいものである。予想された結果が得られ たときの嬉しさ、予想外の事実が世界ではじめて明らかにされたときの気分の高 まりなど、研究者冥利を実感する瞬間である。しかし、それに到達するには、周 到な準備、失敗を我慢して実験を継続する根気、得られたデータを分析して再現 性のあるものかどうかを判定し、そして得られた結果の冷静な評価が必要である。 学生諸君の研究を見ていると、なかなかこのようには行かない。まず、実験には 危険は付き物だが、これを怖くてはどうしようもない。それをどのようにクリヤ するか。実験中、様々な状態の変化を見逃さず観察し、ノートに記録する。我々 は分子一個一個を肉眼で見ることは出来ないから、分子の集合体について観測さ れる諸変化が個々の分子自身の変化とどう関連するかを想像力の助けを借りて推 察する。そして、それらの得られた事実、推論、それをサポートする実験的事実 を他人に納得させるような文章で発表することで一つの研究が完結する。
これらのことを実現するために、次の諸注意を守ることが大切となる。1996年3月 | 化学教室 | |
(平成7年度安全管理委員 | 黒澤 和教授著) |
本冊子の冒頭に「実験は実験ノートを準備することから始まる」と記されて いるように、実験の記録をノートに細大もらさず残すことは必要不可欠であ ります。そして、その記録の仕方はひとりよがりのものであってはならず、 そこには自ずとある種のルールがあります。
また実験ノートに基づいて書くレポートは、簡潔でしかも著者の意向が十分 に伝わるものでなければなりません。本冊子はそれらの指針を細部に亙って 示したものであります。
付録には種々の物理量の求め方をはじめ、グラフの書 き方、単位の使い方、引用文献の略し方などが収録されており、学生諸君は もとより、現役の研究者にとっても大変に参考になる事項を纏めてあります ので、十分に活用ください。とくに、はじめて化学実験を行う一年生はこの 指針を常に座右におき、訓練を重ねるよう期待します。1986年3月 | 化学教室 | |
(昭和60年度化学科主任 | 甲斐文朗教授著) |
実験は実験ノートを準備することから始まる。予習に基づいて実験を行う際 には実験ノートを十分に活用し、得られた結果のまとめや考察なども実験ノ ートの記述に従って更に深く検討を加える。そして最後に実験レポートを書 く場合には、それまでに実験ノートに記された総ての内容を参照しながら、 簡潔な文章で明解な内容の実験報告を作成する。このように実験ノートはそ の実験にとって不可欠なものであるから、以下に記す「書き方」の本質をよ く理解し、、より有効な利用法を考えるように心掛けたい。実験ノート の体裁については、いわゆる大学ノート(ファイル状のノートは避け、サイズ はA4が望ましい)を用意し、第一ページは目次として用い、二ページ目から見 開きにして利用する。
左ページ | < -- 実験の前日までに以下の要領で作成しておく | 右ページ | -- > 実験中および実験後に記入する |
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実験レポートは、その実験が著者のどのような考えの基に何を目的としてどんな 原理に基づいて行われ、その結果として何が得られ、著者が何を考察してどんな ことを結論したのかということが、第三者に明瞭に伝わらなくてはならない。従 って、「実験報告」である以前に、まず明瞭な文章として書かれたものでなけれ ばならないことは言うまでもない。たとえば図表や式を示す場合でも、単にそれ らを掲げるだけでなく、その前後には筋の通った文による説明が与えられていな ければならない。
体裁については、A4のレポート用紙を縦長において横書きにし、ペンやボールペン などの(黒)インクで書く。鉛筆はグラフなど特別な場合のみ用いる。レポートは各 題目ごとに完結したものでなければならない。レポートはA4版紙ファイルに新しい レポートが上になるように順に綴じていく。
実際に書く実験レポートは、実験ノート(主に右ページ)に基づき、自分が行った実 験の報告として過不足ない内容を、正確な文章で簡潔に記せばよい。それには以下 に示すような事柄をまとめればよい。実験題目
共同実験者氏名(共同実験の場合のみ)
ある物理量には、必ず一つ、しかもただ一つだけの正しい値があり、 この値を真の値という。
測定器を用いてある物理量の測定を行う場合に、測定器の指度が被測 定量に一致することはまれである。従ってそのような場合には、目測 による値の見積りを行う必要がある。
測定器の信頼度には必ず限界があるため、どのような測定によっても 真の値を得ることは一般に不可能である。
ある一つの物理量を、方法や信頼度の異なる測定により数多くの測定 値を得たとして、その結果を総て平均すれば測定器の許容限度次第で 真の値に近い値が求まるであろう。このように「真の値」と信じられ る値を承認値という。通俗的には、承認値が真の値と等価と考えられ る。
実測値と真の値との差を確度と言う。しかし上述のように真の値は不 明であることが多いので、真の値の代わりに承認値との差を指す。
承認値が不明で、実測値の間での比較しかできない場合もしばしばあ る。このようなとき、ほぼ同一条件の下で得られた実測値の集積を代 表するのは、それらについての平均値であり、これを最確値と呼ぶ。 そして、一連の測定において得られた個々の値と最確値との差を、各 々の値の精度という。
実験値の評価については、各々独立した意味を持つ確度と精度の双方 が重要である。通俗的に「高精度の測定」と言う場合には、実はこの 両方のうち、どちらか一方だけを意味しているのか、または両方を共 に含んでいるのかを見極めなくてはならない。
得点 | 400点 | 400点 | 160点 | 160点 | |
確度 | 高 | 高 | 低 | 低 | |
精度 | 高 | 低 | 高 | 低 |
実験データの信頼限界を示す定量的な尺度を実験データの誤差という。 ある二つの測定値の差として表される誤差を絶対誤差と呼ぶ。絶対誤 差は測定値と同じ単位を持つ。承認値に対する測定値の絶対誤差はそ の値の確度に相当し、測定値の平均値に対するある一つの測定値の絶 対誤差はその精度に当たる。
同種の物理量に関する二つの測定について、各々の絶対誤差が同じで も測定の信頼度は一般に異なる。
ある測定の持つ誤差を、測定値に対するその絶対誤差の比として表す とき、この比を相対誤差と呼ぶ。相対誤差は同じ単位を持つ物理量の 比であるから無名数であるが、一般的には百分率(%)で示される。上 の例のように、著しく大きさの異なる測定値の誤差を比較する際は、 絶対誤差よりも相対誤差の方が有用である。
ある測定に用いた測定器固有の誤差により、測定値が本来測定される べき値よりも常にほぼ同じ大きさだけ大きいか、あるいは小さく測定 される場合に、その一定の絶対誤差のことを系統誤差という。このよ うな測定値については、その測定器を用いて、承認値の定まっている 系に対する測定を行い、得られた測定値の確度に基づいて補正因子を 決定する。これによって、測定データに系統誤差が含まれていること に対する補正を行うことができる。系統誤差は注意深い実験によって 除き得る。
系統誤差と異なり、同一の測定系による測定値であっても、測定値ご とに符号も大きさも変化する誤差を偶発誤差という。その原因は一定 したものではないから、系統誤差のような「補正」を行うことができ ない。しかし、測定の回数が増せば、実測値に対する正・負の誤差が 互いに打ち消しあうようになると考えることができる。有限回数の測 定が有意義であるためには、その偶発誤差を合理的かつ定量的に見積 ることが必要となる。
ある測定値の偶発誤差の見積りは、(たまたま測定された)最大の誤差 に依るのではなく、合理的な最大誤差に基づかなくてはならない。
ある測定値Xu(Xは数値、uはその物理量の単位)の偶発誤差を±xu(xも 数値)とすれば、X±xuのように表す。
偶発誤差を持つ二種類の測定値に演算を施すと、その結果に含まれる 偶発誤差は次のように見積れる。二つの測定値m1、 m2の誤差をそれぞれ±e1、±e2 とすると、それらの和(差)の誤差Es、および積(商) Mpの誤差 Epはそれぞれ、
Es = (e12 + e22)1/2となる。
Ep = Mp{(e1/m1)2 + (e2/m2)2}1/2
(G. D. Christain, "Analytical Chemistry", 5th ed., John Wiley and Sons, Inc., New York NY (1994), p.15.)
同条件の測定にばらつきがあるとき、その算術平均(相加平均)を最確値とい い、その数値の信頼できる桁数を有効数字という。有効数字以下の数字は書 いてもデータとしての意味を持たない。測定では普通、測定機機・器具の最 小目盛の1/10まで読み取る。従って、末位の数字は目測による見積りの数で ある。有効数字にはこの末位の数字も含めて表示する。
誤差が示されていない数値は、最後の桁に±0.5のあいまいさがあるものと 考える。例えば35.4は有効数字が3桁で±0.05のあいまいさがあり、35.40で は有効数字4桁、±0.005のあいまいさを持つ。従って、10間隔で測定した値 290は2.9x102と表すと有効数字が2桁であることが正しく示さ れ、290と書くと1目盛間隔で測定し有効数字は3桁であることを示す。下記 の数の有効数字の桁数は次のようになる。
35401 | 有効数字 | 5桁 |
0.3540 | 有効数字 | 4桁 |
0.354 | 有効数字 | 3桁 |
3.54x105 | 有効数字 | 3桁 |
有効数字を加減して得た数値の有効数字の末位は、高い位の有効数字の末位 と同じになってしまう。下記の例で35.4および15.4は0.1の桁までしか分か っていない。従って、0.1以下の数字が他の数では分かっていても加減算の 結果は0.1以下の数字が不確かなものとなる。また、除して得た数値は有効 数字の桁数の小さい方の桁数と同じになってしまう。即ち、乗除算の結果は 確かさの最も低い数(有効数字の桁数が最も小さい数、キーナンバー)によっ て左右される。有効数字以下の数字は四捨五入して丸め込む。
35.4 + 0.354 = 35.754 --> 35.8 15.4 - 8.395 = 7.005 --> 7.0 35.4 x 2.016 = 7.13664 --> 7.14 354.54 x 21 = 7445.34 --> 7.4x103 3545.4/253.0 = 14.0134 --> 14.01 0.3545/8.64 = 0.04103 --> 0.0410
小数点の位置や符号に関係なく数値計算の解がキーナンバーよりも小さい場 合、不確かさの最小値を表示するために数字を一つまたは二つ付け足す。た だし、その数字はかなりのあいまいさを含むことを示すために下付きで表示 する。
42.68 x 891 / (132.6 x 0.5247) = 546.57キーナンバーは891である。解の絶対値がキーナンバーの絶対値より 小さいので、解は546.6となる。末位の6はそれがかなり のあいまいさを含むことを示すために下付きで表示する。キーナン バー自体に1/891の不確かさがあり、解も少なくとも6/5466(=1/911) の不確かさがある。
乗除算では最終解が有効数字を保つように各々の計算の各段階の解は統計的 処理により丸めを行うこともある。しかし、最終解の信頼性を保つためには 有効数字の末位の二つまたは一つ下の桁の数字を含めて計算を行い、最後に 丸める。
収率% = (収量g / 理論収量g) x 100%
理論収量を計算するとき、原料のどれを基準にするかが問題となる。しかし、 合成実験においては、原料(starting material)に対して試薬(reagent)を等モ ル用いることはなく、必ず過剰に加える。そうすることにより、原料をなるべ く効果的に生成物に変換しようとするのである。また複数の原料を用いる場合 もあるから、理論収量の計算には反応を主体的に構成する原料を基準に採ると よい。しかし、反応の性質によっては、どれが基準になるか紛らわしい場合が ある。そのようなときには、何を基準にして計算した収率かを明記する。
原料 | 試薬 | 生成物 |
HNO3 | ||
C6H6 | ---> | C6H5NO2 |
(H2SO4) | ||
Mw = 78.114 | Mw = 123.11 |
ただし、Mwは分子量または式量
ベンゼン(5.25g)からニトロベンゼン(4.31g)が得られたとする。まず、 理論収量は5.25g x (123.11/78.114) = 8.27gであり、従って収率は
(4.31g/8.27g) x 100% = 52.1%となる。この値は有効数字の点からは正しい。しかし、実際には出発 物質が何の副反応も起こさないで反応式通りに目的物を与えることは 少ない。また、反応後の分離精製(再結晶、蒸留、抽出など)の際にも かなりの損失があるので、小数点以下の数字の議論は無意味である。 よって、収率の表示としては、52%と記す。
物理量 = 数値 x 単位
従って、測定値などを示す場合には単位も明記すること。また、物理量を含む 計算式は数値だけでなく必ず単位と共に示すこと。
単位の使用についてはSI単位を原則とする。SI単位系は、SI単位[基本単位(7 種類)、補助単位(2種類)、誘導単位(固有記号のある単位と固有記号の無い単 位)]、およびSI接頭語からなっている。これらのうちから、基礎的な化学の実 験で多用される単位を以下の表に示しておくので、レポートなどにはできるだ けそれらの単位を用いること。
物理量 | SI単位の名称 | SI単位の記号 | |
---|---|---|---|
長さ | メートル | meter | m |
質量 | キログラム | kilogram | kg |
時間 | 秒 | second | s |
電流 | アンペア | ampere | A |
熱力学的温度 | ケルビン | kelvin | K |
物質の量 | モル | mole | mol |
光度 | カンデラ | candela | cd |
物理量 | SI単位の名称 | 記号 | SI基本単位による表現 | |
---|---|---|---|---|
平面角 | ラジアン | radian | rad | m m-1 = 1 |
立体角 | ステラジアン | steradian | sr | m2 m-2 = 1 |
物理量 | SI単位の名称 | 記号 | SI基本単位による表現 | |
---|---|---|---|---|
周波数 | ヘルツ | hertz | Hz | s-1 |
エネルギー | ジュール | joule | J | kg m2 s-2 |
力 | ニュートン | newton | N | kg m s-2 = J m-1 |
仕事率 | ワット | watt | W | kg m2 s-3 = J s-1 |
圧力 | パスカル | pascal | Pa | kg m-1 s-2 = N m-2 = J m -3 |
電荷 | クーロン | coulomb | C | s A |
電位、起電力 | ボルト | volt | V | kg m2 s-3 A-1 = J A-1 s-1 |
電気抵抗 | オーム | ohm | Ω | kg m2 s-3 A-2 = V A-1 = S-1 |
コンダクタンス | ジーメンス | siemens | S | kg-1 m-2 s3 A2 = Ω-1 |
静電容量 | ファラッド | farad | F | A2 s4 kg-1 m-2 = A s V-1 |
インダクタンス | ヘンリー | henry | H | m2 kg s-2 A-2 = V A-1 s |
セルシウス度 | スルシウス度 | degree of Celsius | ℃ | K(定義 Θ/℃ = T/K -273.15) |
物理量 | SI単位による表現 | |
---|---|---|
波数 | メートル分の1 | m-1 |
面積 | 平方メートル | m2 |
体積 | 立方メートル | m3 |
速度 | メートル毎秒 | m s-1 |
加速度 | メートル毎秒の二乗 | m s-2 |
密度(質量密度) | キログラム毎立方メートル | kg m-3 |
電場強度 | ボルト毎メートル | V m-1 = kg m s-3A-1 |
磁場強度 | アンペア毎メートル | A m-1 |
電気伝導率 | ジーメンス毎メートル | S m-1 = s3 A2 kg-1 m-3 |
双極子モーメント | クーロン・メートル | C m = A s m |
磁気モーメント | アンペア・平方メートル | A m2 |
熱伝導率 | ワット毎メートル・ケルビン | W m-1 K-1 = kg m s-3 K-1 |
熱容量、エントロピー | ジュール毎ケルビン | J K-1 = kg m2 s-2 K-1 |
比熱容量、比エントロピー | ジュール毎キログラム・ケルビン | J kg-1 K-1 = m2 s-2 K-1 |
モル熱容量、モルエントロピー、気体定数 | ジュール毎ケルビン・モル | J K-1 mol-1 = kg m2 s-2 K-1 mol-1 |
濃度 | モル毎立方メートル | mol m-3 |
重量モル濃度 | モル毎キログラム | mol kg-1 |
大きさ | SI接頭語 | 記号 | |
---|---|---|---|
1024 | ヨタ | yotta | Y |
1021 | ゼタ | zetta | Z |
1018 | エクサ | exa | E |
1015 | ペタ | peta | P |
1012 | テラ | tera | T |
109 | ギガ | giga | G |
106 | メガ | mega | M |
103 | キロ | kilo | k |
102 | ヘクト | hecto | h |
10 | デカ | deca | da |
10-1 | デシ | deci | d |
10-2 | センチ | centi | c |
10-3 | ミリ | milli | m |
10-6 | マイクロ | micro | μ |
10-9 | ナノ | nano | n |
10-12 | ピコ | pico | p |
10-15 | フェムト | femto | f |
10-18 | アット | atto | a |
10-21 | ゼプト | zepto | z |
10-24 | ヨクト | yocto | y |
以下の単位はSI単位ではないので厳密には使用すべきではないが、精度 を要しない場合など特別な場合には(従来からの習慣上)止むを得ず使用 することがある。
1964年に国際度量衡総会(CGPM)の決定によりリットルの古い定義(それ によると1l = 1.000028 dm3)は廃止され、新たにリットル という用語で立方デシメートルを表す非SI系の特別の名称として用いら れるようになった。しかしあいまいさの恐れがあるので、CGPMは高精度 の結果を表現するときには、リットルという名称やその記号を使用すべ きでないと勧告している。
トンという単位は日常生活では今後も使われるであろうが、英トンすな わち1.0160469088Mgを意味する大トンと、米トンすなわち0.907184714Mg を意味する小トンと混乱しやすいためもあって、科学者は多分この単位 を用いることはほとんどないものと思われる。
物理量 | 単位の名称 | 記号 | SI単位による値 |
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体積 | リットル(liter) | l, L | 10-3 m3 = dm3 |
長さ | オングストローム(angstrom) | A | 10-10 m |
質量 | トン(tonne) | t | 103 kg |
時間 | 分(minute) | min | 60 s |
時間(hour) | h | 3600 s | |
日(day) | d | 86400 s | |
平面角 | 度(degree) | ° | (π/180) rad |
圧力 | バール(bar) | bar | 105 Pa |
気圧 | atm | 101325 Pa | |
常用ミリメートル水銀柱 | mmHg | 13.5951 x 9.80655 Pa | |
トル | Torr | (101325/760) Pa | |
ポンド毎平方インチ | psi | 6.894757 x 103 Pa | |
エネルギー | キロワット時 | kW h | 3.6 x 104 J |
熱化学カロリー | cal | 4.184 J | |
濃度 | モル濃度(モーラー) | M | mol dm-3 |
磁束密度 | テスラ(tesla) | T | J A-1 m-2 = Wb m-2 |
ガウス(gauss, emm) | G | 10-4 T |
ある測定を行ってその結果を表にしてみても、そこに与えられたデータを解釈 しようとすると容易でないことがしばしばある。そのようなとき、データを一 括してグラフに示すことは次のような利点がある。
従って、データをグラフに表すことは、データの整理・解析を行い、また、何 らかの数値を求めるために最も重要な手続きの一つである。
われわれが通常グラフ用紙と呼んでいるのは1mmの方眼紙で、大きさ はA4版の物が一般的である。グラフ用紙には他に、片対数・両対数・ 等角方眼・円形方眼などの種類や、B5からA1などの大きさ、均質紙や トレース紙などの紙質が異なるものなど多種多様である。従って、目 的や用途に応じて適切なものを使い分けるようにするとよい。例えば 対数軸を持つグラフ用紙にある現象の測定結果を直接プロットしてみ ると、複雑な計算をしなくても測定値の示す傾向(規則性)が一目瞭然 となることが多い。
通常はグラフ用紙上に2本の直交線を引いて軸とする。横軸(水平線) には独立変数(われわれが目的に応じて勝手に変化させることのでき る物理量)、縦軸(垂直線)には従属変数(独立変数に応じて測定される 物理量)を、それぞれ右および上に向かって増加するようにとるのが 一般的である。軸には目盛を打ち、適当な間隔をおいて目盛に数値を 添える。また両軸の変数についても明示する必要がある。軸上に示さ れるのは単に数値のみとなるよう、軸の名称は「軸の名称(物理量)/ 単位」(これが数値を与える)として示す。目盛の間隔と範囲の選択は 極めて重要である。データの総てをなるべく容易にプロットできるよ うにそれらを選ぶことは言うまでもないが、プロットした点から両変 数の間の数量的関係が見出しやすい(直線関係は軸に対して約45°の 線上に点が並ぶようなプロットにすると見やすい)ように目盛の間隔 を決めたり、後に外挿線や切片を求めることができるように範囲を定 めたりする配慮が不可欠である。さらに、図の下側の適当なところに 図の名称を付ける。図が多数あるときは名称のほかに図番号を付ける。 なお、表の場合は表番号および名称は表の上側に付けるのが一般的で ある。
各データを、両軸の変数に応じた座標によりグラフ用紙上にプロット する。プロットはできるだけ小さな点で示す。そしてその点のまわり を適度な大きさの円で囲むのがよい。厳密にはこの円の大きさが実験 誤差の範囲を指示すべきであるが、通常この円はプロットした点の位 置を見つけやすいようにするためだけに用いる。なお、実験誤差の範 囲を示す方法としては、誤差範囲に相当する長さの線分を両軸に各々 平行に引いて示す、いわゆる「エラーバー(error bar)」を用いるの が一般的である。
グラフ用紙にプロットされた点を直線や曲線で結ぼうとする前に、ま ずそのグラフでは個々の点が意味を持つのか、あるいはそれらの連な りとしての線が意味を持つのかを考えておかなくてはならない。そし てそれに応じて線の引き方にも異なった配慮が必要となる。例えば、 各点を総て通るような結び方をすべきか否か、滑らかにつなぐのがよ いか折り曲げて結ぶのがよいか、直線でつなぐか曲線を当てはめるか などについて考える。これらのことは、データの解釈などの当面して いる問題にとって本質に関わる。考えなしにまたは先入観を持って無 造作に線を引いてしまい、それにとらわれて問題点を見失うことがあ るから注意すべきである。
一般に、グラフ上の滑らかな線は両変数の間の定量関係を教えてくれ ることが多い。しかし一方では、滑らかなグラフを描いたり測定値を 内(外)挿したりする操作には、科学的に意味のある不規則点を見逃し てしまう危険性をはらんでいる。このことに関しても、測定に並行し ながらデータをグラフに逐次プロットしてゆくことが極めて有用であ る。すなわち、測定中に予想外の異常な値(グラフ上ではそれまでの 滑らかな傾向から外れる点)が得られたならば、その値を与えた条件 (独立変数)の近傍でさらに細かく測定点を選んで再測定を行い、その 不規則点の存否を確認することができる。
グラフに線を引く際、太い線を引くと精度が落ちるように思うためか 薄く細い線を描く人が少なくない。通常のグラフに有効数字3桁以上 の精度を要求するのは無理なことでもあるし、線は濃くはっきりと描 くようにすべきである。直線、曲線を問わず、線の引き方に習熟する と、最小二乗法の計算結果とほぼ同様の結果をグラフからアナログ的 に得ることも可能である。殊に曲線の引き方には様々な工夫が考えら れるので、各自で検討してみるとよい。
Javaを使っています。日本化学会原子量小委員会による原子量表 (化学と工業,49(4) (1996))を基にした。 |
各数値の後のカッコ内に示した数はその数値の標準偏差を最終桁の1 を単位として表したものである。
単位の記号には活字を用い、複数を意味する場合でも形を変えず、文末にく るとき以外はピリオドを打たない。
物理量を示す記号は活字を用いる。
物理量 | 記号 | 数値 | 単位 | |
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真空の透磁率* | permeability of vacuum* | μ0 | 4πx10-7 | N A-2 |
真空中の光速度* | speed of light in vacuum* | C0 | 299792458 | m s-1 |
真空の誘電率* | permittivity of vacuum* | ε0 | 8.854187816x10-12 | F m-1 |
電気素量 | elementary charge | e | 1.60217733(49)x10-19 | C |
プランク定数 | Plank constant | h | 6.6260755(40)x10-34 | J s |
アボガドロ定数 | Avogadro constant | L, NA | 6.0221367(36)x1023 | mol-1 |
電子の静止質量 | rest mass of electron | me | 9.1093897(54)x10-31 | kg |
陽子の静止質量 | rest mass of proton | mp | 1.6726231(10)x10-27 | kg |
ファラデー定数 | Faraday constant | F | 9.6485309(29)x104 | C mol-1 |
ハートリーエネルギー | Hartree energy | Eh | 4.3597482(26)x10-18 | J |
ボーア半径 | Bohr radius | a0 | 5.29177249(24)x10-11 | m |
ボーア磁子 | Bohr magneton | μB | 9.2740154(31)x10-24 | J T-1 |
核磁子 | nuclear magneton | μN | 5.0507866(17)x10-27 | J T-1 |
リュードベリ定数 | Rydberg constant | Ry | 10973731.534(13) | m |
気体定数 | gas constant | R | 8.314510(70) | J K mol-1 |
ボルツマン定数 | Boltzmann constant | k, kB | 1.380658(12)x10-23 | J K |
重力定数 | gravitational constant | G | 6.67259(85)x10-11 | m3 kg-1 s-2 |
自由落下の標準加速度* | standard acceleration due to gravity* | gn | 9.80665 | m s-2 |
水の三重点* | triple point of water* | Ttp(H2O) | 273.16 | K |
セルシウス温度目盛のゼロ点* | zero of Celsius scale* | T(0℃) | 273.15 | K |
理想気体(1 bar、273.15 K)のモル体積 | molar volume of ideal gas (at 1 bar and 273.15 K) | V0 | 22.71108(19) | dm3 mol-1 |
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